甲南女子中学2015年度入試 科目別分析
【国語】
□2015年の入試の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間 60分
・出題内容:論説文 物語文 評論文
〈A入試1次〉
第一問は論説文、第二問は物語文で、問題数が例年よりやや多めでしたが、出題形式自体は例年通りでした。
第一問は、問一~問四は必ず正答すべき問題で、特に問四は文章中から抜き出せるレベルの問題なので、取りこぼせない問題でした。問五は、よくある接続詞の選択問題、問六は、文章をよく読み取った上で選択すべき問題、問七、問九、問十、問十二は、時間をかけて正確な解答を出すべき問題だったので、高得点を取るための分かれ道だったと思います。問八は、指示語の内容を記述で答える問題ですが、簡易な問題で、問十一も例年通りの文挿入問題で確実に解答すべき問題でした。
第二問は、問一、問二、問四はそれぞれ語意、漢字、慣用句を問うもので、必ず正答すべき問題でした。問三の選択問題、問五、問六の記述問題もそれぞれ標準レベルの問題でした。問七、問八、問九も正しく文章を読み取れば解ける程度の問題でした。問十は慣用句の類推解釈問題、問十一、問十二、問十五の記述問題も標準レベルで、ここに至るまでにどれほど時間の貯金ができていたのかというところでした。問十三、問十四の選択問題ですが、問十三は前後の文脈から読み取れますし、問十四は話者の心情、セリフをもとに推測しながら正答する問題でした。この問題が意外と解答できていない受験生がいたかもしれません。
目標ラインはSアドバンストで75点、スタンダードで67点です。
〈A入試2次〉
第一問は評論文、第二問は物語文で、1次試験より問題数は減少しますが、その分記述問題が増えるという
例年通りの出題傾向でした。ただ、A2次はSアドバンスト志願者のみのため、受験生のレベルが上がり、人数も例年を越えるものでした。それゆえに、些細なミスが致命的なミスになったかもしれません。
第一問の評論文では、まず問一の漢字で間違えたとすればcの『映ずる』ですが、文章の前後の流れから、反映する、映し出されると考えれば解けたはずです。問二~問四(1)は2次受験者なら落とせない選択問題、問八も当然答えるべき問題でした。問六の文挿入問題も過去問等で練習すれば例年通りの出題問題であり、それ以外の選択問題、記述問題をいかに正確に答えることができたかが高得点の分かれ道だったと思います。
第二問の物語文は、記述問題をいかに正確に答えるか、せめて部分点を取れるかがポイントでした。記述問題の割合が半数を占めるということは、すべて白紙、あるいは不正解だとすると普通に考えても半分、または記述問題だけにそれ以上の点数を落とすことになります。特に、問一、問四、問七、問九はきっちり答えて、問二、問三、問八の30字、40字、50字の記述問題に時間をかけることができたかが高得点の分岐点となったのではないでしょうか。問十のような選択問題も選択肢をじっくり見極めるだけの時間がそこまでにあったかどうか、全体的に文章を速く正確に読み取り、時間のかかる問題の見極めができたかどうかだと思います。
目標ラインは(Sアドのみ)66点です。
〈B入試〉
第一問は論説文、第二問は物語文でした。A1次と比べるとやや難易度も上がり、記述問題数も増加し、A
2次同様に記述問題の解答が合格を左右するものだったと思われます。
第一問の論説文は、問一~問四、問十は取るべき問題で、その他の選択問題、記述問題の対応がカギでした。
他の文献が挿入され、話が変わるようで全体像は変わらない。論理的思考で、単元ごとに切り離して考え
ることができたのかどうかです。また、文章が長くない分、本文中の言葉を使いながらその説明をうまくでき
るかどうかも重要ですが、選択問題も正しい内容を選び出せたかどうか、第二問のための時間の貯金をつくり
ながら時間をかける問題を見極められたかどうかが重要です。問十二がそういう問題でした。
第二問の物語文は、第一問の論説文より読みやすい分、ここにたどりつくまでに第一問でいかに時間の貯金
をつくれたかどうかです。選択問題も時間があれば正しい答えを導き出せますが、重要なのはここでも記述問
題。第一問と比べると難易度は低く、ペース配分さえうまくいけば、問三はきっちり解ける問題で、問四は
時間をかけて記述すべき問題だったと思います。問五も高得点を狙うなら落とせないレベルの問題でした。
第二問できっちり点数を確保し、第一問をどれだけ拾えたかどうかが高得点のカギだったと思います。
目標ラインはSアドで75点、スタンダードで65点です。
甲南女子中学2015年度入試 科目別分析
【算数】
□2015年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間 60分
・出題内容:1枚目で計算と小問題が10題、2枚目以降で大問が5~6題出題されます。
1枚目で基礎力、2枚目以降で応用力を判断する問題構成となっています。
1枚目は答えのみ記入、2枚目以降の大問は式と答えを記入する形式です。
出題範囲は文章題、図形、規則性など幅広く、算数の総合力が試されます。
図形問題の出題数が増えており、また出題パターンが多様になっています。
〈A入試1次〉
基本~標準レベルで問題が構成されています。問題集の基本~標準レベルの問題を使って演習量を積み、分野ごとに実力の基盤となる基礎力をつけておきましょう。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、整数問題、比、割合、過不足算、場合の数、面積が出題されました。昨年の分析で、「円の問題が来年も出そうだ」と指摘しましたが、今年も円の問題が出題されました。合格を確かなものとするためには、このような傾向の変化に対応しておく必要があります。
大問の構成は、【2】過不足算、【3】割合、【4】速さ、【5】相当算、【6】流水算となっていました。今年は、大問5つのうち4問が「速さ」と「割合」に関する問題でしたので、甲南女子の傾向に沿って勉強をしている人にとっては、比較的解きやすい問題構成であったと言えそうです。そんな中、【2】の過不足算は難しいと感じた人が多かったと思われます。甲南女子の場合、過不足算や倍数変化算、通過算などは、やや難しい問題が出題されることがあるので、応用レベルまで学習しておくとよいでしょう。
目標ラインはSアドで86点、スタンダードで64点です。
〈A入試2次〉
標準~応用レベルで問題が構成されています。問題集の標準~応用レベルの問題を使って演習量を積み、スピーディーに解法を立てられるようにしておきましょう。また、A入試2次では応用力や正確性も要求されます。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、整数問題、倍数算、相当算、角度、面積が出題されました。(9)(10)の図形問題は、応用問題を解き慣れていないと解くのが難しい問題です。今後は難関校レベルまで視野に入れて、様々な図形問題を学習しておく必要がありそうです。
大問の構成は、【2】消去算、【3】倍数変化算、【5】規則性、【6】点の移動と、幅広い範囲から出題されています。【4】は問題を整理する能力を問われる問題で、問題の図式化の方法次第で、簡単にも難しくもなる面白い問題です。間違った方向に解き進めてしまったときに、それに気づいて解き方を修正する意識を持つようにしましょう。【6】点の移動は、グラフを組み合わせた問題となっており、グラフを読み取る力を試される問題です。グラフを利用した問題は難問が多く、短期間で習得できるものではありませんので、長期的かつ計画的に学習していく必要があります。
全体的に難易度が高い問題構成となっています。全問を解答するためにも、応用力だけでなく、計算力を鍛えてスピードを身につけてください。
目標ラインは(Sアドのみ)69点です。
〈B入試〉
基本~標準レベルで問題が構成されています。問題集の基本~標準レベルの問題を使って演習量を積み、分野ごとに実力の基盤となる基礎力をつけておきましょう。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、整数問題、差集め算、割合、場合の数、角度、面積が出題されました。(8)の場合の数の問題は、数え間違えがないように、慎重かつ丁寧に解くのはもちろん、見直しをするように心がけましょう。
大問の構成は、【2】約数・倍数、【3】相当算、【4】仕事算、【5】図形、【6】規則性、【7】速さとなっており、非常に甲南女子らしい問題構成でした。【2】の整数問題は穴になりやすい単元なので、軽視せずに対策しておく必要があります。また、近年は【1】の(10)や【5】のように、甲南女子の傾向から外れた問題の出題が見られます。どの分野から出題されても対応できるように、苦手な分野を作らないようにしましょう。
B入試は合格ラインが高いので、小さなミスをしないように注意し、多くの問題を解いて慣れておく必要があります。
目標ラインはSアドで90点、スタンダードで74点です。
甲南女子中学2015年度入試 科目別分析
【理科】
□2015年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 50点 試験時間 40分
・出題内容:生物、地学、化学、物理の4分野がまんべんなく出題されます。
得点(50点)の割に出題数が多く、記述問題も出ます。
採点は100点満点で行われ、50点満点に換算されます。
2015年は大問4題の構成で、【1】実験器具、【2】星のうごき、【3】ものの溶け方、【4】動物と植物と、いずれも甲南女子で過去に出題されたことのある単元ですが、【1】実験器具の問題が大々的に出題されたのは2004年以来11年ぶりでした。
甲南女子の理科は、記号選択問題の割合が少なく、用語の記入問題の割合が多くなっています。記述問題も数問出題されますが、1~2行程度のボリュームです。概ね各分野からまんべんなく出題されますが、時事問題が出題されることがあるので、その年の理科に関連するニュースはチェックしておく必要があります。特に天体に関する時事問題はよく出題されるので、日食や月食、流星群があった年は、関連問題を解いておきましょう。
2015年のテストで意表をつかれたのが、【4】《Ⅰ》の(6)(7)です。クジラの肺と鼻についての問題なのですが、理科の問題集でほとんど扱われない問題なので、はじめて見る人が多かったと思われます。クジラやイルカの鼻の位置だけでなく、超音波を出すコウモリや、卵生の哺乳類であるカモノハシなど、特徴のある動物は覚えておくとよいでしょう。
記述問題は、それほど字数は多くないですが(1~2行)、丸暗記、表面的な理解では対応できない問題です。問われている内容、説明を求められている内容の「法則性」や「因果関係」といったものを、自分の言葉で説明できるようにしておくことが必要です。
目標ラインはSアドで40点、スタンダードで35点です。
【社会】
□2015年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 50点 試験時間40分
・出題内容:地理[近畿地方(気候、統計、時事、工業地帯(地域)地図問題、選択問題、記述問題)]
歴史[弥生時代~昭和時代(資料、時事問題、地図問題、選択問題、記述問題、
正誤問題、年代整序問題)]
公民[地方自治関連から、選挙、憲法、環境(特に原子力関連)、時事(選択問題、記述問題)]
2015年度は、地理・歴史分野は全体的に基本的な用語、知識があれば解けるレベルでした。公民に関しては、社会科という科目では当然ですが、過去の時事問題が普通の問題として出題されました。
まず、地理分野ですが、基礎知識があればほとんど解ける問題でしたが、第一問の統計問題の『茶』の都道府県が一つのポイントとなったと思います。ここは先入観で京都府と答えないように、海面漁獲量と工業出荷額をきっちり見極めることが大切です。時事問題としては阪神大震災が出題されました。
次に、歴史分野ですが、こちらも基礎知識があれば解けるレベルですが、年号をきっちり覚えた上で、各時代の特色や出来事を把握しておかないと応用がきかなかった受験生もいたかもしれません。例年出題されていた(2014年度は出題なし)年代順の問題、過去問題にも出題されていた当時の中国名を答える問題、あとは近代史が例年より多く出題されたと思います。年表と世紀の答え方をきっちり暗記していれば十分な問題でした。時事問題としては富岡製糸場と東京オリンピックが出題されました。
最後に、公民分野ですが、基本的な知識と予備知識を問う問題でした。問8の文章では、(1)の答えが文章中にありました。さらに(3)の記述問題も文章をきっちり読んだ上で答える問題だったので、丁寧に解答することが求められたと思います。また、問9は過去に時事問題となった京都議定書のこと、問11も過去~現在までの時事である原発問題が出題されました。問10は今年の時事問題である集団的自衛権が出題されました。
目標ラインはSアドで36点で、スタンダードで32点です。