甲南女子中学2014年度入試 科目別分析
【国語】
□2014年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間60分
・出題内容:論説文 物語文 説明文
〈A入試1次〉
第一問は論説文、第二問は物語文で、例年通りの出題形式でした。
第一問は例年と比べ難易度も低く、高得点を取れるレベルの内容でした。問一、問二は知識があれば全問正解できます。問三も比喩的な表現を理解し、読み取ればいい問題で難問は見当たりませんでした。問四の指示語も普通に解けるレベルですし、問六も同様に難問ではありません。問七のような副詞の選択問題は例年通りの出題傾向で、十分対策ができるものでした。問八は前後の文脈を読み取って挿入すれば解けるもので、問十一の文挿入問題も例年の傾向通りです。問五、問九の50字、30字程度の記述問題に時間をかけて正答することが、高得点の分岐点になったといえます。問十に関しても十分読み取れる問題でした。
第二問は第一問より記述問題の分量が増しますが、全体的な問題数と長文の長さから時間が十分かけられたと思います。例年より長文の長さが短い分、高得点がとりやすかったのではないでしょうか。問一、問四は知識があれば十分全問正解できます。問五、問六、問七、問十の選択問題も4択程度なので十分に正答を導き出せます。問二も標準的な問題、問三、問八、問九の記述問題も、『私』を中心に文章を正しく読み取れば、十分に解答できます。全体的に第一問、第二問とも読みやすく、例年よりはやや難易度は低かったといえます。
目標ラインはSアドバンストで80点、スタンダードで65点です。
〈A入試2次〉
第一問は論説文、第二問は物語文で、例年通りの出題形式でした。今年のA入試1次と比べると文章は長めで、記述問題の数も多くなっていますが、昨年のA入試2次よりも難易度は低く、全体的に読みやすい文章でした。
第一問の論説文は、筆者の主張と具体例の部分をきっちり読み分けることと、時間配分に留意することが高得点の分岐点だったといえます。問一、問十一は漢字や慣用句の知識があれば十分解ける問題、問三、問八のような選択問題も例年通りで前後の文章の流れを読み取れば解答できるものです。問二は例年通りの文挿入問題で、同様のことがいえます。問四、問十も指示内容、言い換えている部分を文章中から見つけ出す問題で、十分に解答できます。問五、問六、問七も同様のことがいえます。問九が70字以内という指定がある分、十分な解答を作成する時間が必要だったと思われます。いかにここに時間をかけて答えられるか、あるいは部分点を得ることができるかが高得点の分かれ道だったのではないでしょうか。
第二問の物語文は、第一問と比べると、記述問題の数も減少していることもあり、比較的読みやすかったといえます。問三の表現技法の選択問題は、『あてはまらない』ということに留意すれば解ける問題、問五も文章を読みながら前後関係を理解すれば選択できたはずです。問二、問七、問十をきっちり解答し、その他の記述問題の設問に時間をかけられたかどうかがポイントです。
目標ラインは(Sアドのみ)60点です。
〈B入試〉
第一問は説明文、第二問は物語文で、例年通りの出題形式でした。
また、難易度も例年通りで、今年のA入試2次と比べるとやや易しいくらいの内容でした。
第一問の説明文は、まず問一の漢字問題、問二の接続詞の選択問題をきっちり正答することです。B入試の合格点は例年低いので、こういう所での減点は致命的ミスになりかねません。全体的に、『日本』と『西欧』の違いをきっちり区別しながら読み取ることが重要です。問四、問十のような選択問題を確実にものにするためにもそこがポイントです。問三、問八の記述問題もそういう所が十分理解できていれば解答できる問題です。問七、問九はうまく読み取れていれば解答できますが、やや見つけ出すのが困難だったかもしれません。
第二問の物語文は、問一、問三、問四、問五、問六、問七、問九の選択問題でなるべく点数を取るようにし、問八、問十の記述を正しく解答を導き出し、問二、問七(2)の60字以内の記述問題にいかに時間をかけることができたかがポイントです。時間のかかりそうな問題に対する瞬時の見極めが重要ですが、解答用紙を見た時点である程度分かると思います。まずは、取れる問題をきっちり答えて、長めの記述問題を見て、時間がかかりそうだと思った時点で、最後に時間を費やすようにするべきです。60字以内の記述問題なので、自分の言葉、本文中の言葉をうまく組み合わせて、文章の場面の状況を考え、ある程度の解答が書ければ十分です。
目標ラインはSアドで65点、スタンダードで50点です。
甲南女子中学2014年度入試 科目別分析
【算数】
□2014年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間 60分
・出題内容:1枚目で計算と小問題が10題、2枚目以降で大問が4~5題出題されます。
1枚目で基礎力、2枚目以降で応用力を判断する問題構成となっています。
1枚目は答えのみ記入、2枚目以降の大問は式と答えを記入する形式です。
出題範囲は文章題、図形、規則性など幅広く、算数の総合力が試されます。
A入試1次の大問で「割合」と「速さ」が出題されず、意外性の高い問題構成でした。
〈A入試1次〉
基本~標準レベルで問題が構成されています。問題集の基本~標準レベルの問題を使って演習量を積み、分野ごとに実力の基盤となる基礎力をつけておきましょう。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、割合、比、倍数算、整数問題、角度、面積が出題されました。計算ミス、問題の読み間違えなどをしないように注意し、全問正解を目指しましょう。小問題で注目しなければならないのが(10)の円の問題です。昨年、円を扱った図形問題が数年ぶりに出題されました(2013年A入試2次大問【5】参照)。過去ほとんど出題されていない円の問題が2013年、2014年と連続で出題されていることから、来年も円を使った長さ、角度の問題が出題される可能性があります。
大問の構成は、【2】周期算、【3】規則性、【4】水量問題、【5】点の移動となっていました。2014年の大きな特徴は、甲南女子で最も頻繁に出題される「速さ」、「割合」の問題が大問で出題されなかったことです。したがって、甲南女子の傾向に沿って対策をしていた人にとっては、力の試される試験であったと思われます。
甲南女子の算数は式と答えを書く形式なので、途中式を丁寧に書いて1点でも多く得点を加算しましょう。
目標ラインはSアドで80点、スタンダードで60点です。
〈A入試2次〉
標準~応用レベルで問題が構成されています。問題集の標準~応用レベルの問題を使って演習量を積み、スピーディーに解法を立てられるようにしておきましょう。また、A入試2次では応用力や正確性も要求されます。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、整数問題、割合、面積が出題されました。(1)(2)で整数問題が2問出題されていることからも、甲南女子が整数問題に力を入れていることがわかります。毎年必ず整数問題が出題されるので、様々なパターンを解けるようにしておきましょう。
大問の構成は、【2】割合、【3】規則性、【4】平均、【5】速さとグラフ、【6】過不足算となっていました。【5】のような2人の間の距離をグラフに表した速さの問題は、過去に何度も甲南女子で出題されている問題です。初見で解くのは難しい問題なので、事前に過去問や類似問題を使って対策しておきましょう。【6】は、過不足算の応用問題です。文章の意味を理解し、整理して順序良く解かないと苦労する問題です。特に(2)は、難関校特有の条件を絞って答えを出す問題なので、この問題に時間を使えるように時間配分に気を付けましょう。
全体的に難易度が高い問題構成となっています。全問を解答するためにも、応用力だけでなく、計算力を鍛えてスピードを身につけてください。
目標ラインは(Sアドのみ)65点です。
〈B入試〉
基本~標準レベルで問題が構成されています。問題集の基本~標準レベルの問題を使って演習量を積み、分野ごとに実力の基盤となる基礎力をつけておきましょう。
1枚目は、計算問題が3問、小問題が7問の構成です。小問題は、年齢算、整数問題、比、割合、図形が出題されました。難易度はA入試1次よりやや難しい程度ですので、A入試1次に合わせて勉強していればB入試の問題にも対応は可能でしょう。
大問の構成は、【2】消去算、【3】速さ、【4】立体図形、【5】場合の数となっていました。【5】の場合の数の問題は、丁寧に書き出して抜けがないように気をつけましょう。1枚目や大問の【2】~【4】を正確かつスピーディーに解き、どれだけ【5】に時間を残せるかがポイントになってくるでしょう。典型問題を先に解く、自分の得意な問題を先に解くなどして、時間配分にも気をつけることで、得点アップを図りましょう。
Sアドを目指す場合は、合格ラインが高いので、小さなミスをしないように、多くの問題を解いて慣れておく必要があります。
目標ラインはSアドで85点、スタンダードで60点です。
甲南女子中学2014年度入試 科目別分析
【理科】
□2014年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 50点 試験時間 40分
・出題内容:生物、地学、化学、物理の4分野がまんべんなく出題されます。
得点(50点)の割に出題数が多く、記述問題も出ます。
採点は100点満点で行われ、50点満点に換算されます。
2014年は大問6題の構成で、【1】インゲンマメの発芽、【2】メダカ、【3】地層、【4】気体の性質、【5】水溶液の性質、【6】回路と、甲南女子の頻出問題で構成されていたので、簡単に感じた人が多かったと思われます。
甲南女子の理科は、記号選択問題の割合が少なく、用語の記入問題の割合が多くなっています。記述問題も数問出題されますが、1~2行程度のボリュームです。概ね各分野からまんべんなく出題されますが、時事問題が出題されることがあるので、その年の理科に関連するニュースはチェックしておく必要があります。2014年は、世界最高齢でエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんに関連し、地層の問題が出題されました。甲南女子の場合、このような強引に理科の問題に繋げる時事問題は稀で、日食や月食、流星群などが直接問題として出題されることが多くなっています。
記述問題は、それほど字数は多くないですが(1~2行)、丸暗記、表面的な理解では対応できない問題です。問われている内容、説明を求められている内容の「法則性」や「因果関係」といったものを、自分の言葉で説明できるようにしておくことが必要です。
2014年の理科で差がつきやすいのは、【6】の回路の問題です。応用問題ではありませんが、豆電球の明るさや、乾電池に流れる電流の量、電池が切れるまでの時間を求められるようにしておかなければいけません。
目標ラインはSアドで40点、スタンダードで35点です。
【社会】
□2014年の全体的な入試傾向とポイント
・配点 50点 試験時間 40分
・出題内容:地理[中部地方(気候、統計、地図問題、記述問題、正誤問題)]
歴史[縄文時代~大正時代(選択問題、資料問題、空所補充問題)]
公民[戦争関連で沖縄、憲法、環境問題を問う形式(正誤問題、空所補充)]
2014年度は、はっきりと時事問題といえる問題は、地理に出題された富士山の世界文化遺産に関する正誤問題と水俣条約ぐらいといえます。確かに公民分野で憲法改正に関連して9条が出たといえばそうですが、基本的にこの問題は公民分野の必須事項なので、時事ではなくても解けるべき問題です。
2013年度までの傾向であれば、基本的な用語、知識があれば8割以上は取れる試験でしたが、2014年度に関しては、思考力、予備知識を問う問題が出題されたこともあり、基本用語+記述問題+予備知識or思考力がなければ高得点は取れなかったと思います。予備知識、思考力の具体例としては、「戦時中に軍人として日本人が戦争に参加したため[ ア ]が不足したため、多くの朝鮮や中国の人々を連れてきて日本各地の[ イ ]や工場で働かせました。」という問題で、予め戦時中の事を知っている予備知識で解くのか、あるいは文脈や当時の情勢から推察して解答を出すのかということだったと思います。
述語の『働かせました。』から[ ア ]には[ 労働力 ]という言葉を連想できるか、[ イ ]は工場とセットで当時働く場所がどこで、戦争中に日本で資源が不足していたものと考えて[ 鉱山 ]という解答が導き出せるのかというように、さらに、ほぼ毎年出題される年代整序問題が出題されず、あまり出題されない半島が三問も出題されたり、時事問題から派生して公民が出題されなかったりと、例年よりも傾向が大きく変わった年だと思いました。さらに、公民は9割以上が記述での穴埋めだけに、正確な漢字で解答できないと点数を大きく落としてしまった受験生もいたのではないでしょうか。
目標ラインはSアドで37点、スタンダードで29点です。