甲南中学2014年度入試 科目別分析
【国語】
□2014年の入試の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間 50分(Ⅰ期午後のみ40分)
・出題内容:Ⅰ期午前a>論説文・作文・文法・漢字(読みがな・書き取り)・文学史と助動詞の解釈
Ⅰ期午後>説明文・文の成分・熟語の反意語
Ⅱ期>随筆・文の並び替え・漢字。ことわざ・文のつくり・熟語
Ⅲ期>論説文・随筆・漢字・慣用句とことわざ・形容詞と形容動詞
<Ⅰ期午前a>
フロントランナーコースが出来たので、問題が少し難しくなるかと思ったのですが、例年通りの難しさの問題でした。前年度に比べると漢字の問題が全体で三問減っていました。書き取りだけで見れば五問減っていました。ですが、昨年度が例年よりも多かったので、甲南の今までの問題と比べるとそんなに変わってはいませんでした。
それ以外で変わっていたところは最後の文法問題で、「食べられる」の表現で尊敬の意味と可能の意味の二通りの解釈が出来ることを記述式で説明させる問題がありました。例年の甲南と比べると、これは今までに出たことがないパターンの問題でした。ここは配点が恐らく四点から六点はあると思われるので、どちらかの意味だけでもいいので埋めて、点数を取りにいかなくてはいけないところです。
目標ラインはフロントランナーで63点、アドバンストで53点です。
<Ⅰ期午後>
初の午後入試ということと、フロントランナー用の問題ということがあったので、Ⅰ期午前aと比べるとだいぶ難しくなるかと思われましたが、そんなに大きくは変わっていませんでした。来年の甲南Ⅰ期午前aを受けるときに練習問題として使っても何ら問題はなさそうです。ただし、小さなミスが許されないという意味では、すごくレベルが高い試験でした。来年はこれよりも難しくなる可能性が充分ありますので、赤本を試験時間より十分短くして解くなどの対策はしておいても損はないと思われます。
二題目と三題目の問題は文法と熟語の問題になっていました。しかし、文法問題といっても細かい品詞などを問う問題ではありませんでした。主語、述語、修飾語の三種類に分類するだけの問題でしたので、ここは出来るなら全問正解してほしいです。おそらく一問あたり二点の配点だと思われますが、着実に正解して欲しいところです。三題目も漢字が難しいものはありましたが、それでも八問の内の五問から六問は正解してほしいです。問題数が少ないので、この熟語の問題も一問あたり二点~三点はあると思われます。これらの二題でどれだけミスを出さなかったかが合否を分けたと思われます。
目標ラインはフロントランナーで71点です。
<Ⅱ期>
今年は二題目に六つの選択肢の文章を並び替える問題がありました。これは例年の甲南の問題にはなかったタイプの問題です。このような問題はおそらく完答なので、ほんの少し順番が違うだけで0点になってしまいます。実際に、順番が一番目でも四番目でも良さそうな文章の選択肢が一つありました。この文章を適切な位置(実際は四番目)に入れられた子はここで大きなアドバンテージを作れたと思います。このような問題が苦手な場合は早々に後回しにして、この後にある漢字問題などに取り組んだ方が良いでしょう。最後の六題目の共通の漢字を入れて熟語を作る問題でも同じことが言えます。五題目の文の書き換えは、ほとんどが書き換え前の文章の単語をそのまま使うだけなので、ここは全問正解を狙えるところです。
目標ラインはフロントランナーで66点、アドバンストで58点です。
<Ⅲ期>
今年から長文の問題が二題に増えていました。長さも、一題目は甲南でよく出されている長さで、そこに同じくらいの長さの問題がもう一題増えていましたので、だいぶペースを狂わされたと思います。そして、長文が一題増えたので、内容に関する記述問題も選択問題も増えました。難易度に関しては、一題目は例年のⅢ期と同じくらいの難易度でしたが、二題目はⅠ期と同じくらいの難易度でしたので、こちらはそんなに難しくなかったと思われます。これらの長文二題でかかった時間をいかに後半で取り返せたかが、合格と不合格を分けたと思われます。三題目以降の漢字問題とことわざ、形容詞と形容動詞の空所補充問題はⅠ期の語彙や文法問題と比べても難易度は変わらないので、ここを素早く処理すれば50分で全問解くことができたと思います。
目標ラインはフロントランナーで62点、アドバンストで70点です。
甲南中学2014年度入試 科目別分析
【算数】
□2014年の入試の全体的な入試傾向とポイント
・配点 100点 試験時間 50分
・出題内容:問題用紙一枚目には主に、計算問題・一行問題が出題され、二枚目に大問が出題されます。計算問題・一行問題は基本的な問題ですが、大問は、基本・標準から難問まで幅広く出題されます。
本年度の大問は図形3問、規則性3問、速さ2問、割合1問、推理と思考(選挙)1問でした。
<甲南Ⅰ期午前a>
2014年度甲南Ⅰ期午前aは、第1問が計算問題、第2問が一行問題、第3問が流水算、第4問が規則性、第5問に立体が出題されました。第1問・第2問の計算・一行問題は特に傾向の変化は見られませんでしたが、大問に変化がみられました。これまで甲南中学入試では、最後の大問で、多くの受験生が見たこともないような難問が出題されていました。しかし本年度は、「立体図形と規則性」が出題されました。これは図形・規則性の典型的な問題ですから、普段からの学習成果がそのまま得点に反映したのではないでしょうか。
本年度の算数は決して難しい問題ではありませんが、問題を解く時に、時間をかけて丁寧に処理をしないと混乱して正解にたどり着きません。従って、第1問・第2問をミスなく処理できたかどうかがアドバンストを合格するポイントになります。
一方、フロントランナーに合格するには応用レベルも問題も正解する必要があります。今年度は、第3問(1)、第5問(1)(2)を確実に正解して、第3問(2)、第4問(1)(2)、第5問(3)(4)のうち2問正解すれば十分でしょう。
目標ラインはフロントランナーで77点、アドバンストで58点です。
<甲南Ⅰ期午後>
甲南Ⅰ期午後入試はフロントランナー志望者のみを対象としています。従って、甲南志望者のみならず、他校を併願する相当レベルの高い受験生が集まるため、ここを突破するのは難しい入試となりました。問題は全部で4問でした。第1問が計算、第2問が一行問題という構成は、午前入試同様です。基本・標準問題のみで構成されており、第3問は平面図形、第4問は推理と思考(選挙)の問題でした。第4問(1)は基本問題ですが、その他の問題は応用・発展レベルなので、これを完答するのは非常に困難です。特に第4問(2)以降は過去に一度類題を解いていなければお手上げでしょう。従って、フロントランナーを突破するには第1問、第2問、第4問(1)を確実に正解させなければいけません。第4問が難問なので、第3問(図形)が合否をわけたと推測されます。
目標ラインはフロントランナーで63点です。
<甲南Ⅱ期>
甲南Ⅱ期は第1問が計算問題、第二門が小問、第3問~第5問がいわゆる大問で、平面図形の計算・速さ・規則性が出題されています。問題自体はオーソドックスな問題で、受験勉強をしていれば一度は類題を解いたことがあるのではないかと思います。しかし、難易度は高く、完答をしようと思うとなかなか骨が折れる問題です。アドバンストを合格するには、第1問、第2問を堅く解いた上で、第4問、第5問の小問を一つでも多く解答する必要があります。フロントランナーを合格するにはさらに第3問(平面図形)を正解させることが必要です。
目標ラインはフロントランナーで76点、アドバンストで60点です。
<甲南Ⅲ期>
第1問が計算、第2問が小問、大問で数列、図形の移動、規則性が出題されています。第3問の小問(2)は難問なので、これをとばして基本的な問題をとればアドバンスト合格点に達すると思います。フロントランナーに合格するには第4問(図形の移動とグラフ)、または第5問(規則性)を正解する必要があります。両問共に決して難しい問題ではありませんので、日々の学習の成果が得点に反映したと思われます。
目標ラインはフロントランナーで79点、アドバンストで56点です。
甲南中学2014年度入試 科目別分析
【理科】
□2014年の入試の全体的な入試傾向とポイント
・配点 80点 試験時間 50分(Ⅰ期午前), 40分(Ⅰ期午後)
・出題内容:物理、化学、生物、地学の4分野からまんべんなく出題されます。
各分野で基礎知識を問う問題と、応用力が問われる問題から構成されています。
他校に比べ記述問題の割合が多いので、文章をまとめる力も必要です。
Ⅰ期午後は難易度が高く、計算問題が9割出題されていました。
<Ⅰ期午前a>
2014年は大問4題の構成で、【1】手回し発電機、【2】地層と岩石、【3】種子のつくりと発芽、【4】中和となっており、各分野から1題ずつ出題されていました。フロントランナーコースが出来たので、少し難しくなるかと思われましたが、例年通り~やや難しい程度の難易度でした。
甲南の理科は、記号選択問題、知識型問題の割合が少なく、用語の記入問題、思考型問題の割合が多くなっています。【1】手回し発電機の問題では、発電機の仕組みだけでなく、「なぜハンドルが重くなるのか」といった理由の部分を理解しておく必要がありますし、【2】地層と岩石では、地層の図を読み取って地形をイメージする必要があります。このように、甲南では考える問題が多く出題されるので、普段から「なぜなのか」を意識して問題を解くようにしましょう。
また、甲南の理科では記述問題が必ず出題され、作図問題も出題されることがあります。特に記述問題は甲南の1番の特徴となっており、1~2行程度の記述だけでなく、5~6行書く必要がある問題も出題されるときがあります。したがって、甲南の理科を攻略するためには、記述力をつけておかないと大きく点数を落としてしまうことになります。記述力をつけるためには、記述問題を集めた問題集を繰り返し解いて、自分の考えを文章に出来るように練習しておきましょう。問題集を使っての勉強の仕方ですが、問題を解いたあとに解説を読むのが効果的です。解説には問題を解く上で必要な理屈の部分が説明されているので、解説を読むことで知識を補完し、理科の知識を深めることができます。2014年は、【3】種子のつくりと発芽の問題で記述と作図の複合問題が出題されており、「これぞ甲南」と言える問題になっていました。作図というのは、中学入試ではあまり一般的ではなく、出題される学校が限られています。しかし、甲南を受験する場合には、必ず対策をしておかなければならない部分です。作図というのは、「○○の絵を書きなさい」と突然言われてもなかなか書けないものです。絵や図を書くことに抵抗のあるお子様も多いので、作図を含んだ問題集を使い、植物や生物の絵を実際に書いて慣れておきましょう。
目標ラインはフロントランナーで57点、アドバンストで47点です。
解説を読んで知識を深めていきましょう。
<Ⅰ期午後>
Ⅰ期午後はフロントランナー用の問題ということもあり、Ⅰ期午前aと比べると難しくなっていました。出題内容を見ると、【1】てこ、【2】月の動き・満ち欠け、【3】生物のつながり、【4】血液じゅんかん、【5】もののとけ方となっており、4分野からバランスよく出題されていましたが、計算問題が全体の9割を占めるという偏った内容になっていました。【1】てこの問題は甲南で頻繁に出題される問題なので、過去問を使って対策をしている人にとっては、馴染みのある問題だったと思われます。甲南のてこの問題は出題されるパターンがある程度決まっているので、過去問を研究してよく出るパターンを把握して対策しておきましょう。【4】血液量を求める問題は、甲南では珍しい問題です。基本~標準レベルの典型問題なので、解いたことがある人も少なくないでしょうが、今までの甲南にはない新しい傾向の問題なので、「見たことはあるけど、難しそうだから・・・」と避けていた人もいるのではないでしょうか。フロントランナーが出来たことによって、今後甲南の問題傾向が変わっていく可能性がありますので、「甲南ではほとんど出ないから・・・」と思わずに、どの分野も基礎的な知識は身につけておいた方がよいでしょう。また、実験や観察の典型問題は、標準~応用まで全て解いておくことで、余裕をもって試験に挑めるでしょう。【5】もののとけ方の問題は、実験過程が多く、それぞれの実験を行ったときに、どういった状態になっているかを整理しながら解いていかないと難しい問題です。この問題が解けるか解けないかで点数に大きな差がついたと思われます。【5】に関しては、レベルが非常に高くなっており、難関校向けの問題集を使って演習を積んでおかないと、時間を浪費してしまうことになりかねません。
来年以降、ここまで計算問題に偏った内容が続くかどうかは定かではありませんから、記述問題や思考型問題を想定して勉強をしつつ、標準~応用レベルの計算問題を多めに解いておくとよいでしょう。
目標ラインは49点です。